万博にユスリカが大量発生した原因はなぜ?対策から天敵まで徹底まとめ

ユスリカ 万博 読売新聞
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2025年4月に開幕した大阪・関西万博。未来への期待が寄せられる一方で、会場ではユスリカの大量発生が深刻な問題となっています。空を黒く染めるほどの群れに、来場者からは悲鳴が上がり、万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」とのギャップも指摘されています。一体なぜ、万博会場でこれほど多くのユスリカが発生してしまったのでしょうか?この記事では、ユスリカ大量発生の根本的な原因から、現在行われている対策、そして意外な天敵の存在、さらにはユスリカの寿命に至るまで、あらゆる情報を網羅的に徹底解説します。専門家の意見やネット上の様々な反応も交えながら、この問題の本質に迫ります。

この記事を読むことで、以下の点が明らかになります。

  • 万博でユスリカが大量発生している具体的な理由や背景
  • 現在実施されているユスリカ対策の内容と、その効果や課題
  • ユスリカを捕食する天敵となる生物たちと、生態系における役割
  • ユスリカの成虫や幼虫(アカムシ)の寿命と発生サイクル
  • この問題に対する専門家や一般の人々の様々な意見や考え方
  • 今後考えられる根本的な解決策や、私たちにできること

1. 大阪・関西万博でユスリカが大量発生しているのはなぜ?その驚くべき理由とは

大阪・関西万博の会場で、突如として問題視されるようになったユスリカの大量発生。この現象の裏には、万博会場特有の環境要因や、開発に伴う生態系の変化が複雑に絡み合っていると考えられています。ここでは、まずユスリカという昆虫の基本的な情報から、万博会場でなぜこれほどまでに増えてしまったのか、その具体的な理由を深掘りしていきます。

1-1. ユスリカとは?人を刺さないが厄介な虫の正体と基本情報

ユスリカは、ハエ目ユスリカ科に属する昆虫の総称で、日本国内だけでも約2000種以上が確認されています。見た目が蚊によく似ているため混同されがちですが、決定的な違いは人を刺して吸血することがないという点です。ユスリカの成虫は口器が退化しており、食物を摂取することはほとんどありません。そのため、直接的な健康被害としては、蚊のような感染症媒介のリスクは低いと言えます。

しかし、ユスリカが厄介者扱いされるのにはいくつかの理由があります。まず、その圧倒的な数です。特定の条件下では爆発的に発生し、「蚊柱」と呼ばれる柱状の群れを形成することがあります。これが視界を遮ったり、口や鼻に入り込んだりすることで不快感を与えます。また、大量の死骸がアレルゲンとなり、アレルギー性鼻炎や喘息を引き起こす可能性も指摘されています。特に、大阪・関西万博の会場で確認されているのは「シオユスリカ」という種類で、沿岸部の汽水域で発生しやすい特徴を持っています。

ユスリカのライフサイクルも特徴的です。幼虫は「アカムシ」として知られ、水中で生活します。このアカムシは水底の泥や有機物を食べて成長し、魚釣りの餌としても利用されることがあります。幼虫期間は環境によって異なりますが、おおむね10日から25日程度です。その後、蛹を経て成虫へと羽化します。成虫の寿命は非常に短く、わずか1日から1週間程度で、この間に交尾と産卵を行い、その短い一生を終えるのです。

1-2. 万博会場がユスリカにとって格好の繁殖地となった3つの要因

では、なぜ大阪・関西万博の会場である夢洲(ゆめしま)が、これほどまでにユスリカの大量発生を招いてしまったのでしょうか。専門家や資料によると、主に以下の3つの要因が複合的に作用したと考えられます。

  1. 豊富な止水域の存在:夢洲は元々、大阪港の浚渫土砂などを用いて造成された人工島です。広大な埋立地には、工事の過程でできたくぼ地や、雨水が溜まりやすい場所が点在していました。ユスリカの幼虫(アカムシ)は水中で生活するため、これらの止水域が格好の産卵場所および育成槽となってしまったのです。特に、万博会場内の植栽帯や雨水枡、そして海側のウォータープラザなどが主要な発生源として疑われています。
  2. 栄養豊富な有機物の堆積:ユスリカの幼虫は、水中の有機物を餌として成長します。夢洲の埋め立てには、建設残土や浚渫土が使われており、これらに含まれる有機物や、雨水などによって流れ込んだ栄養分が水底にヘドロ状に堆積し、幼虫にとって豊富な餌を提供した可能性があります。特に富栄養化した水域では、幼虫が急速に成長し、個体数の増加に拍車をかけたと考えられます。
  3. 夜間照明への誘引:ユスリカの成虫は、光に集まる習性(正の走光性)を持っています。万博会場では、夜間の景観演出や安全確保のために多くの照明が設置されています。特に、大屋根(リング)のライトアップなどが、広範囲からユスリカを誘引し、特定の場所に集中させる結果となった可能性があります。水銀灯や蛍光灯など、紫外線成分を多く含む光は特にユスリカを誘引しやすいとされています。

これらの要因が重なり合うことで、夢洲はユスリカにとって極めて繁殖しやすい環境となり、結果として記録的な大量発生に至ったと推測されます。2025年ゴールデンウィーク中の降雨が、さらに水たまりを増やし、発生を加速させたとの指摘もあります。

1-3. 夢洲の環境変化がユスリカ大量発生を招いた?専門家が指摘する根本原因

ユスリカの大量発生は、単に水と餌と光があったからというだけではなく、より根本的な問題として、万博開発に伴う夢洲の生態系の大きな変化が背景にあると専門家は指摘しています。公益社団法人大阪自然環境保全協会「ネイチャーおおさか」は、万博計画が具体化する以前から、夢洲の自然環境の重要性を訴え、開発による影響を懸念していました。

同協会によると、夢洲は長年にわたる埋め立ての過程で、渡り鳥の重要な中継地となるなど、生物多様性の観点から大阪府レッドリストでAランクに指定されるほど豊かな自然が育まれていました。そこでは、ユスリカも生態系の一部として存在し、多くの鳥類や他の昆虫にとって重要な食物資源となっていました。つまり、ユスリカを捕食する天敵が豊富に存在することで、その個体数が一定のバランスに保たれていたのです。

しかし、万博会場の建設工事によって、これらの自然環境は大規模に改変され、多くの生物の生息地が失われました。特に、ユスリカを主な餌としていた鳥類が減少、あるいは姿を消したことが、ユスリカの天敵不在という状況を生み出し、異常繁殖を許す一因になったのではないかと分析されています。同協会は2022年3月の時点で、「万博予定地では毎年大阪市内とは思えないほど多くのユスリカが発生 それが多くの虫や鳥の命を支えてきた。万博協会は、小さな緑地を会場に作るので鳥も大丈夫といいます。でもその緑地には、彼らを養えるだけのユスリカはいますか?」とSNSで警鐘を鳴らしており、まさにその懸念が現実のものとなった形です。

この状況は、大規模開発が生態系に与える影響の大きさと、そのバランスが崩れた際に何が起こりうるかを示す典型的な事例と言えるかもしれません。環境アセスメントの段階で、こうした生態系の変化に対する十分な配慮がなされていたのか、という点も問われています。

1-4. 「いのち輝く未来社会」のテーマと矛盾?生物多様性の観点からの問題提起

大阪・関西万博が掲げるテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。このテーマには、人間だけでなく、地球上のあらゆる生命が共存し、持続可能な社会を築いていこうという願いが込められていると解釈できます。しかし、会場で起きているユスリカの大量発生と、それに対する駆除という対応は、このテーマと矛盾しているのではないか、という声も上がっています。

登録者193万人を超える生物系ユーチューバー「おーちゃん」さんは、実際に万博会場を訪れた後、自身のYouTubeチャンネルで「“いのち輝く”はどうなってんだよ!」と運営の対応を批判しました。彼は、水辺にユスリカがいるのは自然なことであり、過剰に騒ぐべきではないと主張しつつ、「会場内で昆虫採集禁止してるくせに、殺虫剤をまくのは納得いかない!殺すぐらいやったら、俺に捕らせろよ」とも発言しています。この発言は、万博の理念と現実の対応との間のずれを鋭く指摘するものとして、多くの反響を呼びました。

もちろん、多くの来場者が訪れる国際的なイベントにおいて、不快害虫とされるユスリカを放置することは現実的ではないという意見も理解できます。快適性や衛生面を考慮すれば、ある程度の対策はやむを得ないという判断もあるでしょう。しかし、大阪自然環境保全協会が指摘するように、殺虫剤に頼る駆除は一時的な効果しかなく、生態系へのさらなる負荷や、薬剤の海洋汚染といった新たな問題を引き起こす可能性も否定できません。

この問題は、私たち人間が自然とどう向き合い、共生していくべきかという、より大きな問いを投げかけています。「いのち輝く」というテーマを掲げるのであれば、ユスリカのような小さな命も含めた生態系全体への配慮と、持続可能な形での解決策を模索する姿勢が求められるのではないでしょうか。単に害虫として駆除するだけでなく、なぜ大量発生したのかという根本原因に立ち返り、生態系のバランスを回復させるようなアプローチこそが、万博のテーマにも合致するのかもしれません。

2. 【徹底解説】万博で実施中&効果が期待されるユスリカ対策はこれだ!

万博会場を悩ませるユスリカの大量発生に対し、運営側は様々な対策を講じ始めています。しかし、その効果や持続性については専門家からも疑問の声が上がっており、根本的な解決には至っていないのが現状です。ここでは、現在行われている対策の内容と、専門家が提言するより効果的なアプローチ、そして来場者自身ができる自衛策について詳しく解説します。

2-1. 万博運営側が講じている現在のユスリカ駆除対策とその効果は?

万博の広報担当者によると、ユスリカ対策として主に以下の方法が実施されています。

  • 発生源対策:最も基本的な対策として、幼虫(アカムシ)の段階で駆除することを目指しています。具体的には、降雨後を中心に、会場内の雨水枡や植栽帯(大屋根リング上の植栽を含む)の水たまりなどに、発泡剤タイプの成長阻害剤(IGR剤)を継続的に投入しています。IGR剤は、ユスリカの幼虫が成虫になるための脱皮を阻害し、羽化させないようにする薬剤です。
  • 成虫対策(侵入防止):すでに発生して飛び回っている成虫に対しては、各施設や店舗への侵入を防ぐための対策が中心です。具体的には、建物の入口に大型のベープ(薬剤揮散器)や殺虫ライト(電撃殺虫器や捕虫灯)を設置したり、殺虫剤を散布したりしています。また、通気ダクトにメッシュを設置して物理的に侵入を防ぐ試みも行われています。

これらの対策は、各施設管理者や出展者と協力して進められているとのことです。実際に、会場内のファミリーマートでは、虫の侵入を防ぐために従業員がドアの開閉に付きっきりになったり、防虫シートなどに多額の費用を投じたりしているものの、十分な効果は得られていないという声も聞かれます。警備員も「僕たちはどうすることもできない」と、対策の難しさを吐露しています。

害虫防除技術研究所の代表で医学博士の白井良和氏は、発生源への成長阻害剤の投入は最初に講じるべき対策であると評価しつつも、「植栽などの小さな水たまりだけでは、今回のような大発生にはいたらないので、やはり海側のウォータープラザが発生源だと思われます」と指摘しており、広範囲な発生源への対策が追いついていない可能性を示唆しています。

また、成虫対策については、「殺虫ライトや殺虫剤などは店内への侵入対策として効果があります。ただ、膨大な数のユスリカ死骸の清掃などは手間がかかります」と述べており、対症療法的な側面が強く、根本的な解決にはならないとの見方を示しています。特に、「スイングフォグ」という殺虫剤を噴霧器で広範囲に散布する方法は、万博のイメージダウンにつながるため現実的ではないとも語っています。

2-2. アース製薬も協力!殺虫剤・成長阻害剤による対策のメリット・デメリット

ユスリカ問題の深刻化を受け、大阪府の吉村洋文知事は2025年5月21日の会見で、府と包括連携協定を結んでいる大手殺虫剤メーカーのアース製薬株式会社にユスリカ対策の協力を要請したことを発表しました。アース製薬は、長年にわたる害虫駆除の研究開発で培った知見や製品群を有しており、その協力に期待が寄せられています。

アース製薬が協力することで、より効果の高い殺虫剤や成長阻害剤の選定・使用方法、あるいは新たな駆除技術の導入などが進む可能性があります。例えば、特定の種類のユスリカに効果的な薬剤や、環境への負荷が少ないタイプの薬剤の使用などが考えられます。

メリットとしては、

  • 専門的な知見に基づく効果的な薬剤選択と使用法が期待できる点。
  • 即効性のある殺虫剤を使用することで、一時的にせよ成虫の数を減らし、来場者の不快感を軽減できる可能性。
  • 成長阻害剤の適切な使用により、次世代の発生を抑制し、長期的な個体数管理に貢献する可能性。

などが挙げられます。

一方で、デメリットや懸念点としては、

  • 殺虫剤の広範囲な使用は、ユスリカ以外の益虫や他の生物にも影響を与え、生態系をさらに攪乱するリスク。特に、すでに弱っている夢洲の生態系にとっては追い打ちとなる可能性があります。
  • 薬剤が土壌や水質を汚染し、最終的には大阪湾の環境にも悪影響を及ぼす可能性。特に、雨水などによって薬剤が海へ流出するリスクが懸念されます。
  • ユスリカは繁殖サイクルが早く、薬剤抵抗性を持つ個体が出現する可能性。そうなると、さらに強力な薬剤が必要になり、悪循環に陥ることも考えられます。
  • 「いのち輝く」という万博のテーマとの整合性。薬剤による大規模な殺虫が、テーマの理念に反するという批判は避けられないでしょう。
  • 効果が一時的である可能性。発生源が広範囲にわたる場合、薬剤散布だけで完全に発生を抑えるのは困難であり、継続的な散布が必要になるかもしれません。

大阪自然環境保全協会は、「殺虫剤を用いたところで、時間的に間に合わないでしょうし、効果も一時的なものです。薬剤が漏れて、いずれは瀬戸内海を汚す可能性もありますよね」と、薬剤に頼る対策の限界とリスクを指摘しています。アース製薬の協力は心強いものの、その手法や範囲については慎重な検討と、環境への影響を最小限に抑える配慮が不可欠です。

2-3. 専門家が提言する根本的なユスリカ対策とは?発生源管理の重要性

多くの専門家が口を揃えて指摘するのは、ユスリカ対策において最も重要なのは発生源対策であるという点です。成虫をいくら駆除しても、発生源から次々と新しい個体が羽化してくるため、いたちごっことなり、根本的な解決には繋がりません。効果的かつ持続的な対策のためには、幼虫(アカムシ)が生育する環境そのものを改善し、発生を元から断つことが不可欠です。

具体的な発生源管理の方法としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 止水の排除・管理:会場内のあらゆる水たまりをなくすことが基本です。雨水枡や側溝は水はけを良くし、水が溜まらない構造に改善する(例:勾配をつけたU字溝への更新)。植栽の受け皿や、放置されたバケツなども定期的に点検し、水を捨てる必要があります。大きな池や水景施設については、水の循環を良くしたり、定期的な排水や清掃を行ったりすることが求められます。
  2. 汚泥・有機物の除去:ユスリカの幼虫の餌となる水底のヘドロや有機物を物理的に除去します。池や水路の浚渫(しゅんせつ)や底泥吸引などが有効です。これにより、幼虫の生育に必要な栄養源を断つことができます。
  3. 水際環境の整備:池や水路の岸辺をコンクリートで固めるのではなく、植物を生やすなどして、天敵となる生物(トンボのヤゴなど)が住みやすい環境を作ることも間接的な発生抑制に繋がります。
  4. 成長阻害剤(IGR)の適切な使用:前述の通り、IGR剤は幼虫の羽化を阻害する効果がありますが、これも発生源となる水域を特定し、適切な濃度とタイミングで使用することが重要です。広範囲に闇雲に散布するのではなく、ピンポイントで効果的に使用することが求められます。

東大薬学部の池谷裕二教授は、ユスリカの幼虫であるアカムシの生存能力の高さを指摘し、「たぶん人の手では駆除できないはずなんですよ。だからもうこれは、あきらめた方が私はいいかな」と、駆除の難しさについて言及しています。これは、完全な駆除が極めて困難であることを示唆しており、だからこそ、発生しにくい環境を地道に整備していくことの重要性が際立ちます。

大阪自然環境保全協会も、「本質的な対策は、もう一度豊かな生態系を取り戻すことだ」と提言しており、発生源対策と並行して、ユスリカの天敵となる生物が自然に増えるような環境づくりが、長期的な視点では最も効果的である可能性を示しています。

2-4. 来場者が自分でできるユスリカ対策は?服装や虫除けグッズなど

万博会場での大規模な対策が進められる一方で、来場者自身ができる自衛策もいくつかあります。ユスリカは人を刺すことはありませんが、大量に群がってくると不快なものです。少しでも快適に過ごすために、以下のような対策を検討してみましょう。

  • 服装の工夫:
    • 長袖・長ズボンを着用する:肌の露出を減らすことで、ユスリカが直接体に付着するのを防ぎます。特に夕方以降、活動が活発になる時間帯に屋外に出る際は効果的です。
    • 明るい色の服を選ぶ:ユスリカは暗い色や黒っぽい色に集まる傾向があると言われています。白や黄色、明るいグレーなど、淡い色の服装を心がけると、比較的寄ってきにくいかもしれません。
    • 帽子やメガネ、マスクの着用:顔周りや頭髪にユスリカがまとわりつくのを防ぐために有効です。特に「蚊柱」に遭遇した際には、目や口、鼻への侵入を防ぐ助けになります。速乾性のある素材の衣類は、汗をかいても快適さを保ちやすいでしょう。
  • 虫除けグッズの活用:
    • 虫除けスプレー(ディートやイカリジン配合):市販の虫除けスプレーの中には、ユスリカに対しても効果が期待できるものがあります。ただし、蚊よけ専用のものよりは、幅広い不快害虫に対応した製品を選ぶと良いでしょう。使用上の注意をよく読んで、適切に使用してください。
    • 携帯用虫除け器(電池式、吊り下げタイプなど):薬剤を揮散させて周囲にバリアを作るタイプの虫除け器も、ある程度の効果が期待できます。ただし、屋外の広い空間では効果が限定的になることもあります。
    • ハッカ油スプレー:ハッカ油には虫が嫌う成分が含まれており、天然素材の虫除けとして利用できます。水やエタノールで希釈して体にスプレーしたり、衣服に数滴垂らしたりする方法があります。ただし、肌が弱い人は刺激を感じることがあるので注意が必要です。
  • 行動の工夫:
    • 発生の多い場所や時間帯を避ける:特に日没前後や、水辺、照明の強い場所はユスリカが多く発生しやすい傾向があります。可能であれば、これらの場所や時間帯の滞在を短くするのも一つの手です。
    • うちわや扇子を持つ:万が一ユスリカの群れに遭遇した場合、うちわや扇子で軽くあおぐことで、一時的に追い払うことができます。

害虫防除技術研究所の白井良和氏は、「来場者が自衛する方法も、ほとんどありません。腰から蚊取り線香をぶら下げるにしても、混んでいる会場内は危険ですからね」と、抜本的な自衛策は難しいとの見解を示しています。しかし、上記のような小さな工夫を組み合わせることで、多少なりとも不快感を軽減することは可能かもしれません。万博を楽しむためにも、できる範囲での対策を試みてはいかがでしょうか。

2-5. 光を利用したユスリカ対策とは?照明の工夫で誘引を減らす方法

ユスリカが光に集まる習性を逆手に取った対策も考えられます。これは「ライトトラップ」の原理とは異なり、ユスリカを誘引しにくい照明環境を作ることで、飛来する数を減らそうというアプローチです。

ユスリカは、特に紫外線領域の光や青色系の短い波長の光に強く誘引されることが知られています。逆に、黄色やオレンジ色、赤色といった長波長の光にはあまり寄ってこない傾向があります。この性質を利用して、以下のような照明の工夫が考えられます。

  1. 紫外線カット・低誘虫性ランプへの交換:
    会場内の照明、特に屋外や出入り口付近の照明を、紫外線放出量の少ないタイプのものに交換する方法です。例えば、従来の蛍光灯や水銀灯から、LED照明に切り替えるだけでも、ユスリカの誘引を大幅に減らす効果が期待できます。LED照明の中でも、電球色(黄色っぽい光)や、紫外線カット処理が施された「低誘虫性ランプ」と呼ばれる製品を選ぶとより効果的です。
  2. 光の色温度の調整:
    照明の色温度(光の色味)を調整することも有効です。青白い光(高色温度)よりも、暖色系の光(低色温度)の方がユスリカを誘引しにくいとされています。
  3. 光の方向や強さの調整:
    不必要に広範囲を照らしたり、過度に明るい照明を使用したりするのを避け、必要な場所に必要な分だけ光が当たるように調整します。例えば、光が水面を直接照らさないようにしたり、上方への光漏れを防ぐような設計にしたりすることで、ユスリカの誘引を抑えることができます。
  4. 誘引灯(おとりランプ)の設置:
    これは、人が集まるエリアから離れた場所に、ユスリカが好む紫外線ランプなどを設置し、そちらへ意図的に誘い込むという方法です。主要エリアへの飛来数を相対的に減らす効果が期待できますが、設置場所や管理方法を誤ると、かえってユスリカを呼び寄せることにもなりかねないため、専門的な知識が必要です。

実際に、家庭用の対策としても、玄関灯やベランダの照明をLEDの電球色に変えたり、防虫効果を謳った照明器具に交換したりすることで、夜間に窓や壁に集まる虫の数を減らすことができるとされています。万博会場のような大規模な施設では、全ての照明を一度に変更するのは難しいかもしれませんが、特にユスリカの飛来が多いエリアから優先的に対策を進めることで、一定の効果が見込めるかもしれません。この光によるコントロールは、殺虫剤を使わない環境負荷の低い対策の一つとして注目されます。

3. ユスリカの天敵は意外な生き物たち!生態系における役割と万博での可能性

ユスリカは多くの生物にとって重要な食物資源であり、自然界では様々な天敵によってその数がコントロールされています。万博会場でのユスリカ大量発生の一因として、これらの天敵が減少したり、姿を消したりした可能性が指摘されています。ここでは、ユスリカを捕食する主な生き物たちと、彼らが万博会場の生態系でどのような役割を果たす可能性があるのかについて見ていきましょう。

3-1. ユスリカを食べる主な生き物たち一覧(魚類・両生類・昆虫・鳥類)

ユスリカの幼虫(アカムシ)と成虫は、それぞれ異なる環境で多様な生物の餌となっています。

以下は、主なユスリカの天敵です。

分類具体例捕食対象万博周辺での役割・可能性
魚類コイ、フナ、キンギョ、メダカ、ワカサギ、タナゴ、ドジョウなど主に幼虫(アカムシ)会場内の池や水路に生息できれば、アカムシの密度を効果的に下げ、水質浄化にも貢献する可能性があります。ただし、外来種の放流は生態系へのさらなる影響を考慮し慎重であるべきです。在来種で環境に適応できる種類が望ましいでしょう。
両生類カエル(成体・オタマジャクシ)、イモリなどカエル成体は水面で羽化直後の成虫や地面にいる成虫を捕食。オタマジャクシはアカムシを食べることもあります。水辺環境が整えば、カエルなどが定着し、ユスリカの発生抑制に貢献する可能性があります。特にアマガエルなどは活動範囲も広いです。
昆虫類トンボ(成虫・ヤゴ)、ゲンゴロウ、タガメ、ガムシ、クモ類、アリ、ゴミムシなどトンボのヤゴは水中でアカムシを強力に捕食。トンボ成虫は飛翔中のユスリカ成虫を捕食。クモ類は巣を張って成虫を捕獲します。多様な昆虫がそれぞれの生活場所でユスリカを捕食します。特にトンボは、幼虫期も成虫期もユスリカの有力な天敵となり得ます。会場に植栽を増やすなどして、これらの昆虫が生息しやすい環境を作ることが重要です。
鳥類ツバメ、スズメ、セキレイ、ムクドリ、カモメ類など主に飛翔中の成虫ツバメなどは空中で大量のユスリカを捕食するため、成虫の密度を下げるのに大きな役割を果たします。かつての夢洲には多くの渡り鳥が飛来しており、ユスリカを重要な餌としていました。これらの鳥類が戻ってこられる環境を再生することが、長期的なユスリカ対策にも繋がります。
その他コウモリなど夜間に飛翔中の成虫コウモリも夜行性で飛翔昆虫を捕食するため、ユスリカの天敵となり得ます。ねぐらとなる場所があれば、効果を発揮するかもしれません。

これらの天敵がバランス良く存在することで、ユスリカの個体数は自然に調整されます。万博会場でこれらの天敵が活動しやすい環境を意図的に作り出すことができれば、薬剤に頼らない持続可能なユスリカ対策への道が開けるかもしれません。

3-2. 万博会場に天敵を呼び戻すことは可能?ビオトープ化構想とその課題

ユスリカの大量発生に対する根本的な対策の一つとして、会場内に天敵となる生物が自然に生息できる環境、すなわちビオトープを創出するという考え方があります。ビオトープとは、多様な生物が共存できる生息空間のことを指し、池や湿地、草地、樹林などを人工的に再現・維持する取り組みです。

万博会場にビオトープを設けることのメリットとしては、

  • ユスリカの天敵(魚類、両生類、トンボのヤゴなど)が定着し、継続的にユスリカの幼虫(アカムシ)を捕食してくれることで、発生数を自然に抑制できる。
  • ツバメなどの鳥類が飛来しやすくなり、ユスリカの成虫を捕食してくれる。
  • 殺虫剤の使用を減らすことができ、環境負荷の低減に繋がる。
  • 「いのち輝く」という万博のテーマに合致した、生物多様性に配慮した取り組みとして評価される。
  • 来場者に対して環境教育の場を提供できる。

などが考えられます。

具体的には、会場内の池や水路を改修し、魚や水生昆虫が住みやすいように水深や水流を調整したり、水草を植えたりします。また、周辺に草地や低木を配置することで、トンボやカエル、鳥類などが集まりやすい環境を作ります。実際に、一部の専門家や自然保護団体からは、このようなビオトープ化構想が提案されています。

しかし、万博会場という特殊な環境でビオトープを機能させるには、いくつかの課題も存在します。

  • 時間とコスト:安定した生態系が形成されるまでには時間がかかります。万博の会期中に十分な効果を発揮できるかという問題があります。また、造成や維持管理にもコストがかかります。
  • 導入する生物の選定:どのような種類の天敵を導入するかが重要です。在来種を優先し、地域の生態系に悪影響を与えないように慎重に選ぶ必要があります。安易な外来種の導入は、新たな生態系破壊を引き起こすリスクがあります。例えば、「カダヤシを放てば良い」といった意見も聞かれますが、カダヤシは特定外来生物であり、メダカなどの在来種を駆逐する可能性があるため、絶対に行ってはいけません。
  • 環境の維持管理:ビオトープは作って終わりではなく、水質管理や植生管理など、継続的なメンテナンスが必要です。万博終了後も見据えた長期的な計画が求められます。
  • 人間の活動との両立:多くの来場者が訪れる万博会場で、デリケートな生態系を維持管理することの難しさがあります。人の立ち入りを制限するエリアを設けるなどの工夫も必要になるかもしれません。
  • 効果の不確実性:自然相手のことなので、期待通りの効果が必ずしも得られるとは限りません。他の要因によって天敵が定着しなかったり、ユスリカの発生を十分に抑制できなかったりする可能性も考慮する必要があります。

大阪自然環境保全協会は、「夢洲という場所は、今からでも回復の策を講じていけば、博覧会終了後には新たな生態系の形成が可能であり、いずれは再び多くの生物が繁殖したり越冬する場所となりうるポテンシャルのある場所です」と、長期的な視点での生態系回復の可能性に言及しています。ビオトープ化は即効性のある対策ではありませんが、万博を機に失われた自然の一部を取り戻し、持続可能な環境づくりを目指すという点で、非常に意義のある取り組みと言えるでしょう。

3-3. 生態系のバランスが崩れた結果?天敵不在がユスリカ大発生の一因か

今回の万博会場におけるユスリカの大量発生は、生態系のバランスが崩れたことの現れであるという見方が強まっています。前述の通り、夢洲はかつて多様な生物が生息する場所であり、そこではユスリカも食物連鎖の重要な一員として、捕食者である天敵によってその数が適切にコントロールされていました。

しかし、万博会場の建設に伴う大規模な造成工事により、多くの動植物の生息地が破壊されました。特に、ユスリカを主な餌としていた渡り鳥などが飛来しなくなった、あるいは大幅に減少したことが、天敵による自然の抑制力を大きく削いでしまったと考えられます。その結果、ユスリカは捕食されるプレッシャーから解放され、豊富な発生源(水たまりや有機物)と相まって、爆発的に個体数を増やすことができたのではないかと推測されます。

これは、自然界における「捕食者-被食者関係」の重要性を示す事例です。天敵がいなくなると、被食者(この場合はユスリカ)が異常繁殖し、時には人間社会にとって問題となるような状況を引き起こすことがあります。例えば、ある地域で特定の捕食動物が絶滅したり減少したりすると、その餌となっていた草食動物が増えすぎて植生に大きなダメージを与える、といったケースは世界各地で報告されています。

大阪自然環境保全協会は、万博のアセスメント報告書が「生態系への影響はない」としていたことに対し、今回のユスリカ大量発生は「その“誤り”が“現実”によって“指摘された”もの」と厳しく批判しています。これは、開発計画の初期段階で、生態系への影響評価が十分でなかった可能性を示唆しています。

ネット上のコメントでも、「コンクリートで足元固めて、プレハブで視界の前に物を立てているがそれで全てがコントロール出来るわけじゃない それがいのちというもの 足元固める前に何があって何がいたのか 来場者や政治家は考えてほしいね」といった意見が見られ、開発優先の姿勢が生態系への配慮を欠いた結果ではないかという市民の疑問が示されています。また、「ユスリカは害ないけど それを捕食しに来る生物が出て来ると 話が変わってくる」「なお、ユスリカ目当てに鳥が集まって来ている模様。ということは鳥の糞問題が出てくるかもなぁ」といったコメントは、生態系の複雑なつながりを示唆しており、一つの問題解決が新たな問題を生む可能性も示しています。

このように、ユスリカの大量発生は単なる害虫問題ではなく、人間活動が生態系に与える影響の大きさと、そのバランスの重要性を改めて私たちに教えてくれる出来事と言えるでしょう。天敵が自然に機能する健全な生態系を取り戻すことが、長期的に見て最も持続可能で効果的な対策となるはずです。

4. ユスリカの寿命はどれくらい?短い一生と大量発生のサイクル

万博会場で大量発生し問題となっているユスリカですが、その一生は非常に短いことで知られています。しかし、その短いライフサイクルの中で巧みに繁殖を繰り返し、条件が揃えばあっという間に大群を形成します。ここでは、ユスリカの成虫と幼虫(アカムシ)の寿命、そして年間の発生サイクルについて詳しく見ていきましょう。

4-1. ユスリカの成虫の寿命はわずか数日?驚きの短命サイクル

ユスリカの成虫の寿命は、種類や環境条件によって多少の差はありますが、一般的に極めて短いです。多くの場合、羽化してからわずか1日から数日、長くても1週間程度でその一生を終えます。この短い期間に、ユスリカの成虫は精力的に活動し、子孫を残すという唯一最大の目的を果たそうとします。

成虫になると口器が退化しているため、基本的に餌を摂ることはありません(一部の種類では水分を摂取するとも言われています)。羽化後のエネルギーは、幼虫時代に蓄えた栄養だけでまかなわれます。そのため、成虫の活動は交尾と産卵にほぼ集約されます。

オスは羽化後すぐに群れを作り、「蚊柱(かばしら)」と呼ばれる柱状の集団を形成してメスを待ちます。メスが蚊柱に近づくと、オスはメスを捕獲して交尾を行います。交尾を終えたメスは、水辺を探して産卵します。産卵場所は、池や川、水たまり、側溝など、幼虫が生育できる水域です。卵はゼリー状の物質に包まれた卵塊として産み付けられることが多く、1匹のメスが数百から数千個の卵を産むこともあります。

産卵を終えたメスは、その役割を終えたかのように力尽き、死んでしまいます。オスもまた、交尾後に長く生きることはありません。このように、ユスリカの成虫は、まさに次世代に命を繋ぐためだけに存在するかのような、はかなくも効率的な一生を送るのです。万博会場で大量に見られるユスリカの死骸は、この短い命を終えた成虫たちの姿なのです。

4-2. 幼虫(アカムシ)期間と羽化のタイミングはいつ?

ユスリカの生活史の中で、比較的長い時間を占めるのが幼虫の期間です。ユスリカの幼虫は一般に「アカムシ(赤虫)」として知られています。その名の通り、体色が赤いものが多く、これは血液中のヘモグロビンに似た成分(エリスロクルオリン)を含んでいるためで、酸素の少ない汚泥中でも生活できる能力を持っています。

アカムシの期間は、水温や餌の量、日長条件などによって大きく変動しますが、おおむね10日から25日程度です。暖かい時期や栄養豊富な環境では成長が早く、逆に水温が低い時期や餌が少ない環境では成長が遅れ、数ヶ月に及ぶこともあります。幼虫は水底の泥や有機物を食べて成長し、通常4回脱皮します。終齢幼虫になると蛹(さなぎ)になり、蛹の期間は種類や環境によりますが数時間から数日程度です。

羽化のタイミングは、主に水温と日長に影響されると考えられています。多くのユスリカは、特定の環境シグナル(例えば、水温の上昇や特定の日長)を感知して一斉に羽化する傾向があります。これにより、同じ時期に多数の成虫が出現し、蚊柱を形成して効率的に交尾相手を見つけることができるのです。万博会場での大量発生も、特定の時期に気象条件などが揃い、一斉に羽化した結果と考えられます。

東大薬学部の池谷裕二教授は、「幼虫のアカムシがものすごく生存能力が高い」と指摘しています。アカムシは乾燥や低酸素、ある程度の水質汚染にも耐えることができるため、駆除が非常に難しいとされています。この高い生存能力が、成虫の大量発生へと繋がる基盤となっているのです。

4-3. 年間を通じて発生?ユスリカの活動時期と季節変動について

ユスリカは、種類によって活動時期や年間の発生回数(世代数)が異なりますが、日本のような温帯地域では、多くの場合、春から秋にかけて長期間にわたり発生が見られます。特に、水温が上昇する初夏から夏、そして秋口が発生のピークとなる種類が多いです。

1年のうちに何世代も繰り返す「多化性」の種類が一般的で、好条件が続けば、年に7~8世代、あるいはそれ以上に世代を重ねることもあります。例えば、ある種類が春に羽化して産卵し、その卵から育った幼虫が初夏に羽化、さらにその子供たちが夏に…といった具合に、次々と世代が繰り返されることで、年間を通じて個体数が維持され、時には爆発的に増加します。

冬期は、水温が低下するため多くの種類で活動が鈍化したり、幼虫の状態で越冬したりします。そして春になり水温が上昇し始めると再び活動を活発化させ、羽化・繁殖を開始します。万博会場で問題となっているシオユスリカも、春から秋にかけて発生し、特に水温が上がるこれからの季節に繁殖が活発になると予想されています。

このように、ユスリカは短い成虫寿命とは対照的に、年間を通じて見ると巧みに世代を繋ぎ、環境さえ整えばいつでも大量発生しうるポテンシャルを持っています。そのため、一時的な駆除対策だけでは効果が持続しにくく、年間を通じた発生源管理や環境整備が重要となるのです。

5. ユスリカ大量発生問題に対する様々な意見や反応まとめ

大阪・関西万博でのユスリカ大量発生は、会場を訪れる人々だけでなく、報道やSNSを通じて多くの人の知るところとなりました。この問題に対しては、生物の専門家、万博のテーマとの関連を指摘する声、そして一般市民からの様々な意見や反応が寄せられています。ここでは、代表的な意見や注目すべき視点を紹介し、この問題が多角的にどのように捉えられているかを見ていきます。

5-1. 生物系ユーチューバー「おーちゃん」の万博ユスリカ駆除への怒りとその真意は?

登録者193万人(2025年5月時点)を誇る人気生物系ユーチューバー「おーちゃん」さんは、実際に万博会場を訪れ、ユスリカが大量発生している状況を確認しました。その上で、運営側が駆除に乗り出したという報道に対し、自身のYouTubeチャンネルで強い意見を表明しました。

おーちゃんさんは、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を引き合いに出し、「“いのち輝く”はどうなってんだよ!」と、テーマと駆除行為の矛盾を指摘しました。そして、「水があるところには大体ユスリカがいます。ユスリカぐらいでギャーギャー騒ぐなよ、みっともない」と、ユスリカの存在は自然なことであり、過剰反応すべきではないとの考えを示しました。

さらに、「今言ったことは全部建前です。本音を言わせていただくと、会場内で昆虫採集禁止してるくせに、殺虫剤をまくのは納得いかない!殺すぐらいやったら、俺に捕らせろよ」と、生物への愛着と、運営の対応への強い不満を表明しました。この発言は、生き物を愛する者としての純粋な気持ちと、万博の理念と現実のギャップに対する皮肉が込められていると解釈できます。

この発言に対して、ネット上では賛否両論が巻き起こりました。「よくぞ言ってくれた」「その通りだ」といった共感の声がある一方で、「影響力のある人が無責任な綺麗事を言うな」「イベント会場と自然の生態系を一緒にするな」といった批判的な意見も見られました。また、「自分のチャンネルで公開したジョーク交じりの動画が全国に向けて文字起こしされたせいで、偽善を言ってると勘違いした通りすがりが文句を言う現代によくある地獄絵図」といった、メディア報道の切り取り方に対する指摘もありました。

おーちゃんさんの発言は、ユスリカという小さな生き物を通じて、万博のあり方や人間と自然との関わり方について一石を投じるものとなり、多くの人に考えるきっかけを与えたと言えるでしょう。

5-2. 東大 池谷裕二教授が語る「ユスリカ駆除は諦めた方がいい」理由とは?

東京大学薬学部の池谷裕二教授は、2025年5月24日放送のTBS系「情報7daysニュースキャスター」に出演した際、万博のユスリカ問題について私見を述べました。池谷教授は、注目ニュースとしてこの話題を取り上げ、「万博会場で大量発生しているんですけど、幼虫のアカムシがものすごく生存能力が高いので、たぶん人の手では駆除できないはずなんですよ。だからもうこれは、あきらめた方が私はいいかな、と、そう思います」と驚きの発言をしました。

この発言の背景には、ユスリカの幼虫であるアカムシの並外れた生命力があります。アカムシは低酸素状態やある程度の水質汚染にも耐え、乾燥にも強いという特徴を持っています。そのため、発生源となる水域から完全にアカムシを排除することは極めて困難であると、池谷教授は指摘しているのです。

さらに池谷教授は、「万博のテーマフレーズが『いのち輝く未来社会(のデザイン)』なので、これも命の輝きでいいんじゃないのかな。なんだったらミャクミャクに並んで第2のマスコットにしてもいいじゃないかな」と冗談めかして語りつつも、その後に真顔で「それぐらい生存力が高いので、これはもうしょうがないかな」と繰り返し、駆除の難しさを強調しました。

司会の安住紳一郎アナウンサーが「ユスリカの幼虫がアカムシ?」と確認すると、池谷教授は「釣りの餌とかになっているんですよね。普通は魚が寄ってきて食べちゃうんだけど、大量発生すると。でも人工池だと魚がいないから、駆除できないと思います」と、天敵の不在が大量発生を助長している可能性にも言及しました。

池谷教授のこの見解は、科学的な視点からユスリカの生態と駆除の限界を冷静に分析したものであり、薬剤などに頼る短期的な対策だけでは問題解決に至らないことを示唆しています。むしろ、ある程度の共存を前提とした上で、長期的な視点での環境管理や、来場者への啓発といったアプローチの重要性を示しているのかもしれません。

5-3. 大阪自然環境保全協会の警告「3年前から指摘していた」内容と背景

公益社団法人大阪自然環境保全協会「ネイチャーおおさか」は、今回のユスリカ大量発生問題について、ある意味で「当然の成り行き」であるとの見解を示しています。同協会は、万博計画が具体化する以前の2022年3月の時点で、SNSなどを通じて夢洲の生態系への影響とユスリカ大量発生の可能性について警鐘を鳴らしていました。

同協会の指摘のポイントは以下の通りです。

  • 夢洲は元々、大阪府レッドリストで生物多様性ホットスポットAランクに指定されるほど、渡り鳥などが集まる自然豊かな場所だった。
  • そこではユスリカも生態系の一部であり、多くの鳥類などの命を支える重要な餌となっていた。
  • 万博開発によりこの自然環境が破壊されれば、ユスリカを捕食する天敵が減少し、ユスリカが大量発生する可能性がある。
  • 万博協会が計画していた会場内の小さな緑地だけでは、鳥類を養うだけのユスリカ(餌)は確保できないのではないか。

これらの懸念は、万博の環境アセスメント(環境影響評価)の段階から繰り返し指摘されてきましたが、同協会によれば、その提言は「一切聞き入れられることはなかった」とのことです。そして、結果として「多様な生態系は完全に壊滅してしまいました。『生態系への影響はない』と書き並べたアセスメント報告書の“誤り”が、ユスリカの大量発生という“現実”によって“指摘された”ものと理解しています」と、開発側の評価の甘さを厳しく批判しています。

同協会は、殺虫剤による駆除についても、「時間的に間に合わないでしょうし、効果も一時的なものです。薬剤が漏れて、いずれは瀬戸内海を汚す可能性もありますよね。そしてなにより『いのちかがやく』というテーマをないがしろにするやり方です」と、その場しのぎの対策であり、さらなる環境破壊に繋がりかねないと懸念を示しています。

そして、「本質的な対策は、もう一度豊かな生態系を取り戻すことだ」と強調し、夢洲の自然再生のポテンシャルに言及しています。この早期からの警告と、その後の現実の状況は、大規模開発における環境配慮のあり方や、専門家の意見を真摯に受け止めることの重要性を改めて浮き彫りにしています。

5-4. ネット上の声:万博のユスリカ問題に集まる賛否両論まとめ

万博のユスリカ大量発生問題は、SNSやニュースサイトのコメント欄でも活発な議論を呼び、様々な意見が寄せられています。主な意見を分類すると、以下のような傾向が見られます。

駆除はやむを得ない・対策を求める声:

  • 「多くの人が来るイベントで虫を駆除する事にクレームは難癖もしくは価値観の押し付けだと思います。」
  • 「万博以外にも虫は全部居なくなって欲しい。昆虫苦手すぎる…」
  • 「飲食店で食中毒出まくるで・・・。(微生物やウイルスも命というなら)」
  • 「快適に万博を楽しみたいので、しっかり駆除してほしい。」

これらの意見は、来場者の快適性や衛生面を重視し、大規模イベントにおける害虫駆除は当然であるという考え方に基づいています。特に虫が苦手な人にとっては切実な問題であり、万博運営側の迅速な対応を求める声が多いです。

ユーチューバーや専門家の意見への賛同・共感:

  • 「おーちゃんさんの言う通り。自然との共生とは何か考えさせられる。」
  • 「池谷先生の言うように、駆除は難しいのかも。それならそれで受け入れるしかないのでは。」
  • 「ネイチャーおおさかさんの警告が生かされなかったのが残念。」

専門家や影響力のある人の意見に耳を傾け、短期的な駆除だけでなく、より本質的な問題解決や自然との向き合い方を考えるべきだという意見です。

万博運営や開発への批判・皮肉:

  • 「“いのち輝く”とは虫の命だったのか。」
  • 「どうもこうも、インチキ工法の大屋根リング、並び倒し、予約枠の転売、タバコ吸い放題、空飛ばないクルマなどなど。インチキ万博の有り様ですよ。」
  • 「生態系を破壊しておいて、問題が起きたら殺虫剤って、あまりにも短絡的。」
  • 「コンクリートで固める前に、そこに何があったのか考えてほしい。」

万博の理念と現実のギャップ、これまでの運営の不手際、環境への配慮不足などを指摘し、批判的な視点を持つ意見です。ユスリカ問題が、万博全体への不信感を増幅させている側面もうかがえます。

生態系や環境問題への言及:

  • 「天敵がいなくなったのが原因では?鳥を呼び戻すべき。」
  • 「殺虫剤は他の生き物にも影響が出る。もっと自然な方法で対策できないのか。」
  • 「人間の言う「いのち」とか「自然」って人間に心地良いものだけが対象だからなぁ。」
  • 「田舎の風景見て「自然が綺麗ですね。」って言うけど、あの景色は昔の百姓、つまり人間が作った景色。…それが人間の自然との共生」

ユスリカ問題を、より大きな生態系の問題や人間と自然の関係性の中で捉えようとする意見です。短期的な対策だけでなく、長期的な視点での環境保全の重要性を訴える声が見られます。

その他の意見・冷静な視点:

  • 「ユスリカなんて万博以外でも多いんだから、万博のが駆除されたからって『俺に捕らせろよ』ってのもおかしな話でしょ。まぁ話題に便乗した売名行為でしかないんだろうな。」(ユーチューバーへの批判)
  • 「正直この件はどちらでもいい…来場時に対策すれば良いし」
  • 「万博に行けばわかるけど虫がどこにいるのかも分からない。ごく一部の狭い範囲だけ。」(被害の程度への疑問)

このように、ネット上では多様な立場からの意見が交錯しており、ユスリカ問題が一筋縄ではいかない複雑な問題であることを示しています。それぞれの意見には一理ある部分もあり、これらの声を総合的に捉えることが、問題解決への糸口を見つける上で重要になるかもしれません。

6. まとめ:万博ユスリカ大量発生問題から考えるべきこと【原因・対策・天敵・今後の展望】

大阪・関西万博で発生しているユスリカの大量発生問題は、単なる不快害虫の出現というだけでなく、大規模開発と環境、そして万博の理念そのものについて、私たちに多くのことを問いかけています。本記事で見てきた原因、対策、天敵、そして様々な意見を踏まえ、最後にこの問題から私たちが何を学び、今後どのように向き合っていくべきかを整理します。

ユスリカ大量発生の主な原因の再確認:

  • 環境要因:夢洲という埋立地の特性(豊富な止水域、有機物を含んだ土壌)がユスリカの繁殖に適していた。
  • 生態系の変化:万博開発による自然環境の破壊で、ユスリカの天敵となる鳥類などが減少し、自然の抑制力が失われた。
  • 光の誘引:会場の夜間照明が広範囲からユスリカを呼び寄せた。

現在の対策と今後の課題:

  • 運営側の対策:発生源への成長阻害剤投入、成虫への殺虫剤散布や侵入防止策が中心。アース製薬も協力。
  • 課題:殺虫剤は一時的な効果に留まり、生態系への悪影響や薬剤抵抗性のリスクも。根本的な発生源対策(水域管理、汚泥除去)の徹底と、長期的な視点での生態系回復(ビオトープ創出など)が求められる。

天敵の重要性と生態系バランス:

  • 魚類、両生類、昆虫類(トンボなど)、鳥類(ツバメなど)がユスリカの重要な天敵。
  • これらの天敵が自然に生息できる環境を回復させることが、持続可能なユスリカ対策の鍵。
  • 生態系のバランスが崩れると、特定の生物が異常発生するリスクがあることを再認識する必要がある。

ユスリカの生態と寿命:

  • 成虫の寿命は数日と短いが、繁殖力は旺盛。
  • 幼虫(アカムシ)は生存能力が高く、駆除が困難。
  • 春から秋にかけて長期間発生し、条件が揃えば一斉に大量発生する。

この問題から私たちが考えるべきこと:

  • 「いのち輝く」の真の意味:万博のテーマと現実の対応との間に矛盾はないか。人間にとって都合の悪い「いのち」をどう扱うべきか。
  • 開発と環境保全のバランス:大規模プロジェクトを進める上で、事前の環境アセスメントの重要性と、専門家の意見を真摯に受け止める姿勢。
  • 短期的な対策と長期的な視点:目先の駆除だけでなく、なぜ問題が起きたのかという根本原因に立ち返り、持続可能な解決策を模索することの重要性。
  • 多様な意見の尊重:この問題には様々な立場からの意見があることを理解し、多角的に問題を捉える。

万博のユスリカ問題は、私たち人間が自然環境とどのように共存していくべきかという普遍的なテーマを内包しています。この経験を教訓とし、今後の都市開発やイベント運営において、より環境に配慮した、真に「いのち輝く」社会の実現に向けた取り組みが進むことを期待します。

最後に、この問題に関連する主要なキーワードをまとめます。

  • ユスリカ 万博 なぜ:夢洲の環境(止水域、有機物)、天敵の減少、光への誘引が複合的に作用したため。
  • ユスリカ対策:発生源管理(水たまり排除、汚泥除去、成長阻害剤)、成虫対策(殺虫剤、ライトトラップ、物理的バリア)、天敵導入(ビオトープ化)。
  • ユスリカ 天敵・食べる生き物:魚類(コイ、フナ、メダカ)、両生類(カエル)、昆虫(トンボのヤゴ・成虫、クモ)、鳥類(ツバメ)。
  • ユスリカ 寿命:成虫は1日~1週間程度と短命。幼虫(アカムシ)期間は数週間~数ヶ月。
  • ユスリカ 大量発生 原因:上記の「なぜ」に加え、開発による生態系バランスの崩壊が根本にある。
  • ユスリカ 駆除方法:殺虫剤散布、成長阻害剤投入、物理的除去、ライトトラップ。
  • 夢洲 生態系:かつては渡り鳥の飛来地。開発により自然環境が大きく変化。

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